「シアター・プノンペン」

製作:2014年(カンボジア)
監督:ソト・クォーリーカー
出演者:ラス・モニー、マー・リネット、ディ・サヴェット、ソク・ソトゥン

珍しいカンボジアの映画なのですが、おそらく多くの人が想像すると思いますが、その想像どおり、映画のレベル的には高いとはいえません。ですが、観終わったあとに「観て後悔しない」映画でした。

「レベルが高くない」を具体的に言いますと、話の進み方や画面の移り変わりや、そもそもになりますが、脚本が薄っぺらい印象を受けます。それでも、繰り返しになりますが「観てよかった」と思える内容になっています。

端的に表しますとこの映画は「国に歴史あり」です。僕は歴史にそれほど詳しくありませんが、その僕がカンボジアで知っていることと言いますと、ポルポト派の虐殺です。この事件について知ったのは大人になってからですが、なにかの記事で読んだのがきっかけでした。

僕は大人になってから歴史に興味を持つようになった人間ですので、ポルポト派の虐殺も大人になってから知ったことです。クメール・ルージュとも言うようですが、国家が間違った方向に行ってしまいますと、平和とはかけ離れた社会になってしまいます。中国の文化大革命を見てもわかるように、国家が常に正しい選択をするとは限りません。

この映画が、映画としてのレベルは今一つながらも、「観てよかった感」を感じるのはカンボジアという国家の歴史を紹介することになっているからかもしれません。一応「どんでん返し」と思わせる展開にはなされているのですが、そこに歴史が関係しているのがこの映画を充実させることにつながっているように思いました。

ポルポト派の虐殺では、知識人など高学歴の人たちが田舎に移住させられて重労働をさせられるのですが、文化大革命でも似たような施策行われていました。映画「ラストエンペラー」では、大学の教授が後ろ手で縛られ侮蔑の言葉が書かれた紙を首から下げさせられて引きずり歩かされる場面があります。

こうしたことから感じるのは、革命には庶民のコンプレックスをくすぐるのが最も効果があることです。先日、高級官僚が起こした事故の裁判がニュースになっていましたが、この事件のときに「上級国民」という言葉が出てきました。これなども学歴の高い人に対する一般の人々の羨望やコンプレックスをくすぐる効果を狙った感があります。

トランプ大統領の選挙の戦い方に通ずるものを感じてしまうのは、僕だけでしょうか。普通に考えて、トランプ氏は大金持ちで、どこをどう考えても一般庶民の気持ちなどわからないと思われますが、それでもトランプ氏を支持する庶民の人がいるのが不思議でなりません。

先日の報道では、いろいろな対策を施して稼いでいる収入に見合った所得税を納めていないようでした。それにもかかわらずトランプ氏を支持する一般の人がいます。トランプ氏の発する情報は、フェイクというにふさわしい内容が多いですが、それを信じてしまう庶民の人が問題です。正しい、本当のことを見抜く目を米国の庶民の人は持っていてほしいものです。

また、次回。

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