The Name

製作:2018年(日本)
監督:戸田彬弘
出演者:津田寛治、駒井蓮

主演の津田さんはテレビ朝日の「警視庁捜査一課9係シリーズ」に出演していますので、親近感があり観ました。実際は、ドラマ自体はあまり見ていないのですが、妻が毎週見ていますのでなんとなく見ている気分になっています。

映画は直木賞作家道尾秀介さんの小説が原作ですが、最後のオチはそれほど感激するほどでもありません。だからと言って、つまらない映画ということではありません。それなりに面白かったです。僕は老年に入ってしまいましたので無理ですが、中年のおじさんだったら、空想したさそうな物語といった感じです。

津田さんで僕が思い出すのは10年以上前ですが、ビジネス番組で再現ドラマのようなものに出演していたのですが、真面目で実直そうな役が思い出されます。そのドラマは知的障害者を雇用した会社の社長の奮闘を描いたものでした。

チョークを製造する会社ですが、その工場で健常者と知的障碍者が一緒に働けるように工夫する社長でした。言葉で言うのが簡単ですが、知的障碍者と普通の人が働くのは想像以上に大変です。なにが大変かと言いますと、普通の人が知的障碍者に教えたり合わせたりすることです。人間は短時間もしくは短期間ですとやさしさとか思いやりを発揮することはできるのですが、それが長期間になるとストレスになります。

その工場ではそれが問題になっていました。同じことをなんども言うのは気苦労ですし、教えたとおりにできないことが続くと怒りが芽生えてきます。社長さんはそうした問題点をシステムで解決しました。

世の中があまりに科学が発展しすぎると社会がギスギスするとか、効率ばかりを求めていると人間らしさが失われる、と主張する人がいます。そうした人は「スローライフ」などを掲げる人もいますが、科学の進歩は社会的弱者を救うことにつながります。決して効率を求めることは人間らしさを失わせることではありません。まったく正反対です。

吉藤オリィさんという方をご存じでしょうか。分身ロボット「OriHime」を開発した方で外見的にはかなり変わった方ですが、実は外見だけではなく内面もですが、寝たきりの方でも社会で働けるようにすることを目指して活動している方です。

寝たきりの方が働けるようになるには科学に進歩は欠かせません。単純な例を挙げますと、新幹線ができたおかげでそれまで2~3日がかりだった出張が1日で済むようになりました。1日もしくは2日をほかのことに使うことができるのです。効率的になるということは、社会的弱者でも行動範囲が広がることです。

吉藤さんの例で言いますと、寝たきりの方が吉藤さんの秘書となりスケジュール管理や広報などをこなしています。こうした活動が可能なのも吉藤さんが科学を進歩させたからにほかなりません。

吉藤さんの活動を見ていますと、活動には資金が必要なことがわかります。その資金を得るために吉藤さんはいろいろな媒体に出ているのですが、こうしたところが福祉活動と異なる点です。

ヤマト運輸の中興の祖と言われる小倉昌男氏は晩年福祉活動に力を入れていたのですが、スワンというパン屋さんを起業しました。そのことを書いた本があるのですが、その中で最も記憶に残っているのは、小倉氏が福祉関係の方々が集まる会合で講演をしたときのお話です。

小倉氏によりますと、福祉関係の方は「儲け」とか「利益」という言葉にとても敏感だそうです。福祉と「儲け」「利益」は対極にあり、福祉関係は「儲けてはいけない」と反発していたそうです。小倉氏はそのような考え方に疑問を呈していました。

「儲け」「利益」を考えてはいけないのですから、障碍者が働く作業所での月給は数万円でも当然、という発想です。小倉氏は障碍者でも健常者と同じくらいのお給料が払えるような企業を目指していました。それがスワンというパン屋さんでした。

先ほどのチョークの企業と同じ発想です。儲けを求めることは悪いことばかりではありません。儲けがあるからこそ弱者でもできることがあります。「The Name」では、最後に主人公と女子高生が親子でないことをわかりつつ、心を通わせる場面があります。

人と人の関係は、いろいろな軋轢があろうとも、最後は心のつながりが重要です。米国も分断などせずにいろいろな立場の人が「心をつなげて」平和で暮らしやすい社会になることを願っています。

最後は、壮大なお話で終わりました((笑)。

また、次回。

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