<悪人>

製作:日本(2010年)
監督:李相日
出演者:妻夫木聡、深津絵里、柄本明、光石研、

今からもう10年も前の映画ですが、公開されるときに大々的に宣伝されていたのを思い出しました。原作は新聞の連載だったそうですが、僕は小説をあまり読まないのであれですが、当時はかなり名作と話題を呼んだようです。

主演の妻夫木さんも原作にほれ込んで自ら売り込んだとなにかに書いてありました。妻夫木さんはこの映画に出演する時点で、もうすでに国民的俳優の地位を確保していたそうです。その妻夫木さんがほれ込んで自ら売り込んだのですから、原作の素晴らしさがわかろうというものです。

妻夫木さんが国民的俳優と呼ばれる由縁は、この映画の前年にNHK大河ドラマで主演をしていたからです。V6の岡田さんもそうですが、大河で主演するということは、それだけで十分に格が上がります。おそらくこんな僕でも大河ドラマに主演したなら、国民的俳優になれるはずです。(~_~;)

岡田将生さんも悪役ながらシブイ演技をしていました。岡田さんと言いますと、NHKの朝ドラ「なつぞら」で「主人公なつ」のお兄さん役を演じていたのが思い出されますが、10年前に十分名わき役だったのですね。驚きです。

妻夫木さんで僕が一番覚えているのは、テレビ朝日の「砦なき者」という役所広司さん主演の特番ドラマです。このドラマは2004年製作ですが、当時役所さんは名俳優の名をほしいままにしていましたが、妻夫木さんは若手俳優の有望株と言われていました。僕は妻夫木さんが「きれいな悪役」を演じていたのが印象に残っています。

当時僕は毎号欠かさず「ビッグコミックオリジナル」を購入することを自分に課していたのですが、その理由は学生時代からずっと読んでいたからです。今ではもう読まなくなってしまいましたが、50代半ばまではずっと読んでいたように思います。

ビッグコミックオリジナルを読み続けていた理由はジョージ秋山さんの「浮浪雲」が連載されていたからです。学生時代にハマってから、「浮浪雲」が僕には人生の指針のように思えていました。ジョージ秋山さんは今年の5月にお亡くなりになったのですが、どす黒いイメージの漫画が多かった印象があります。

例えば、銭ゲバ」とか「アシュラ」など人間の業を描いているように感じていました。「浮浪雲」はそれらとは正反対に明るく勧善懲悪で、そして人生訓がつづられているような漫画でした。そのギャップもまた、「人は一面だけではない」と示しているようで魅力に感じていました。

その「ビッグコミックオリジナル」に浦沢直樹さんの「モンスター」という連載があったのですが、浦澤さんと言いますと「20世紀少年」とか「やわらちゃん」などが有名ですが、僕が知っているのはすべて「ビッグコミックオリジナル」に連載されていたものです。「マスターキートン」も好きな漫画の一つでしたが、僕は「マスターキートン」でアイルランド紛争を知り、宗教に関心を持ち、歴史に興味を持つようになりました。

定かではありませんが、「マスターキートン」の連載が終わったあとに「モンスター」がはじまったように記憶しています。「モンスター」が僕に衝撃を与えたのは、主人公であるモンスター(漫画ではヨハンという青年)が悪人だったからです。それまで主人公は「善良な人」でなければいけないと思い込んでいましたが、「モンスター」は悪人が主人公でした。

善良な主人公は「脳外科医・Dr.テンマ」という人物ですが、あくまで主役は「モンスター」です。「モンスター」は聡明な頭脳を武器に世の中を支配しようと企む青年でした。

テレビ朝日の「砦なき者」の悪役青年を妻夫木さんが演じていたのですが、ドラマを見ながら僕は「モンスター」を重ねていました。ヨハンはきれいな顔立ちの冷たい青年ですが、妻夫木さんはまるでヨハンを意識して真似ているかのように、なんとも言えない冷徹さがありました。

この映画の妻夫木さん演ずる主人公はガテン系の仕事をしている設定ですが、イケメンはどんな格好をしてもイケてる雰囲気がにじみ出てきます。映画の終わりのほうで深津さんが灯台に向かって走っていく場面があるのですが、その「ただ走っている」映像とその深津さんを灯台から見つけて泣いている妻夫木さん、その二人を見ているだけで泣けてきました。

この場面には、映像的には「感動させるような要素」はなにひとつないのですが、それにもかかわらず、こんな冷徹人間の僕を泣かせる映画、、、なんてすばらしい映画なのでしょう。

また、次回。

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