愛の部屋、裸の2日間

製作:フィンランド(2015年)
監督:ミッコ・クパリネン
出演者:マリ=ジョゼ・クローズ、アーリー・ジョヴァー

なんとなくエロそうなタイトルに惹かれて観たのですが、エロい場面はほとんどなく純粋な恋愛映画でした。当初の想像とは違った内容だったのですが、映画的にはとても面白かったです。評価が星3つ半だったのが不思議なくらいです。

映画の内容は、世界的に成功しているDJと建築関係の仕事をしている女性がパリのレストランで出会ってからの恋愛のお話です。映画を成り立たせているのは、女性主人公がレズビアンで現在のパートナーとの関係に悩んでいることです。そして、DJの男性と二晩を過ごすのですが、最初に書きましたようにエロい場面は一切ありません。

タイトルに「部屋」とか「裸の」などとつけているのは、刺激的な文字で引き付けようとしたに過ぎないように思います。「裸の」は肉体的なことではなく、精神的なことを指しています。主人公の女性はバイセクシャルという設定ですが、そのことで悩む女性の気持ちが素直になっていく様を「裸」という表現で表しているように思います。

先ほど「バイセクシャル」と書きましたが、僕が学生の頃、つまり40年以上前ですが、その頃は異性にも好意を抱くけど、同性にも好意を抱く人を「両刀使い」と言っていました。なにかの飲み会の席で誰かに教えてもらったのですが、冗談めかして話しながら盛り上がったのを覚えています。

学生時代はほぼ毎日アルバイトをしていたのですが、バイトが終わるとほとんどと言っていいくらい遊び回っていました。高校時代までクラブ活動一筋でしたので、「タガが外れた」という表現がぴったりな生活ぶりでした。まずはまったのが麻雀です。高校時代から麻雀をしていた友だちもいましたが、大学に入って覚えた僕は楽しくて仕方ありませんでした。

それから飲み会です。僕はお酒はほとんど飲めないのですが、みんなと一緒に話しながら盛り上がっているのは好きでした。しかし、元来が体育会ですのでチャラチャラしたのは苦手で、自分でも不思議でしたが、本来の性格は暗いのかもしれません。

麻雀や飲み会で終わったあと、一人で電車に乗っているとき、なぜか寂しくなっていたのを覚えています。どんなに楽しく遊んでも充足感を得られたことはありませんでした。自分でもわかりませんが、その後に脱サラをするのはそうした「充足感」と関係があるのかもしれません。

映画の中の女性はバイセクシャルでしたが、映画を観ながら僕は予備校時代に知り合った友だちを思い出していました。僕の高校は現役で入学する人は一学年に数人で残りはみんな浪人するのが一般的でした。ですので、ほとんどの人は高校時代の友人と同じ予備校に行っていました。

しかし、高校時代にクラブ活動に熱中していた僕はクラブ以外の友人がいませんでしたので一人で予備校に通うことになりました。そこでたまたま知り合ったのがS君でした。S君は優しそうな感じの人で、S君も友人がいないようで、休み時間はほとんど一人で過ごしていました。

そんな僕とS君でしたので、いつしか話をするようになり親しくなっていきました。そんなある日、校舎内をS君と並んでいると、S君が急に腕を組んできたのです。正直、驚きました。女性とさえ腕を組んだことがないのに、男性となんて…。

僕は、それとなく腕を解いたのですが、S君がうつむいたのがわかりました。そのあとはなにごともなかったかのようにお互い接していましたが、心の中ではいろいろな思いが錯綜していました。その後、そのことについてはお互いに触れなかったのですが、S君はどんな気持ちでいたのでしょう。

大学に入学してからはS君と会うこともなくなりましたが、この映画を観てS君を思い出しました。

また、次回。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする