「運び屋」

「運び屋」
2018年製作/116分/G/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演者: クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、アンディ・ガルシア

あらすじ
90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきたが、商売に失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった。(シネマ.comより引用)

若い人向けというよりも僕のような人生の後半を迎えている人用の映画という感じです。映画のテーマを簡潔に言いますと「人生は仕事よりもプライベート、この映画では家族のことですが、それを大切にすることが重要」ということでしょうか。

ここで肝になるのは、「プライベートよりも仕事を優先する心理」です。これも簡単に言ってしまいますと「周りからの評価、今ふうに言いますと承認欲求ですが、その気持ちが強すぎるから」です。人間は誰しも他人から称賛の声をもらいたい生き物ですが、今のSNSを見ていますと、そうした人間の業を見て取ることができます。

もちろん「承認欲求」は悪いことばかりではありません。その気持ちが努力の源になったりエネルギーになったりすることがあるからです。ですが、そうした気持ちが行き過ぎてしまいますと、この映画の主人公のように人生の終盤になって後悔することになります。

人間は、浅はかな生き物ですので、ついつい調子に乗ってしまうことがあります。うまくいっていますとその方向を追い求めてしまい、周りが見えなくなります。そうした状況に陥らないためには、常日頃から自分を客観視することが必要です。

映画のはじまりの部分で少し気になった点があります。主人公が新車に買い替えたあとの映像ですが、その新車でエンジンをかける際に「キーを回していたこと」です。今どきの日本では、ほとんどの車はエンジンを作動させる際キーを回す方式ではなく、ボタンを押す方式です。この映画が製作されたのは2018年ですから、それほど古い時代のお話ではありません。それにもかかわらず「キーを回す方式」が主流になっていたのを不思議に感じました。

話を映画に戻しますと、出演者の中で主人公ほど登場時間が長くないにもかかわらず存在感を出していた俳優さんがいました。それはブラッドリー・クーパーさんです。クリント・イーストウッドさんは主人公ですので存在感が出るのは当然ですが、出演時間が短いにもかかわらず強い印象を残すのは俳優に地力があるからにほかなりません。この映画とは関係ありませんが、僕が今注目している俳優さんは「イーサン・ホーク」さんという方です。この方もまた存在感がすごい人です。

懐かしい顔として印象に残ったのがアンディ・ガルシアさんでした。僕の中ではゴッド・ファーザーのイメージが強いのですが、それはアル・パシーノさんに似ていると思っていたからです。そのときの存在感が強かったのでもっと活躍すると思っていましたが、その後はそれほどではないのが残念です。やはりハリウッドには魅力のある俳優が多いので、その中で生き残っていくのは並大抵のことではないようです。

この映画で監督と主人公を務めているクリント・イーストウッドさんにしても、マカロニウエスタンで人気を博したあと、低迷期があり、その後ダーティハリーで復活し、ハリウッドでの大御所の地位を獲得しています。製作側や監督業に進出したのも影響があるのでしょうが、それができたのは俳優として確たる地位を獲得していたからです。

どんな業界でもそうですが、一度確たる地位を獲得しますと、その後の仕事はやりやすくなります。しかし、その「確たる地位」を獲得するのが難しいんだよなぁ…。

また、次回

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする