火口のふたり

2019年製作/115分/R18+/日本
監督:荒井晴彦
出演者:柄本佑、瀧内公美

あらすじ
東日本大震災から7年目の夏、離婚し、再就職先も倒産してしまった永原賢治(柄本佑)は、かつて恋人だった佐藤直子(瀧内公美)の結婚式に出るため郷里の秋田に帰省する。久々に再会した賢治と直子は、ふとしたきっかけでかつてのようにお互いを求め合う。

この映画を観て最初に思ったのは「こういう手の映画には、下田逸郎さんの歌がピッタリだ」ということです。下田さんは僕が気になった映画で使われることが多いのですが、基本的に僕が好きなものは「大ヒットしない」というジンクスがあるのですが、それがピタリと当てはまる歌となっています。

以前、『きみの鳥はうたえる』という映画をこのコーナーで紹介しましたが、やはり柄本さんが似た(?)ような役を演じていました。柄本さんはその映画で第92回キネマ旬報ベスト・テンと第73回毎日映画コンクールで主演男優賞を獲得しているのですが、この映画も同じ流れで主役に選ばれたような感じがします。

原作は直木賞作家の白石一文氏で、東日本大震災と関係しているように解説されていましたが、僕的にはそういう感じはしませんでした。「東日本大震災との関連」としては「人間はいつ死ぬかわからない」という点だけのように思いますが、それは別に「東日本大震災」だけではありません。普通に生活していても、突然の不幸で死に至ることは多々あります。

それよりも僕は、口はばったい言い方で少し恥ずかしいですが、男女の愛について訴えているように思いました。本当にシンプルにシンプルに言うなら、結婚は「一緒にいたいから」という理由でするべきもの、と訴えているように感じます。

その意味で言いますと、あまりに素直な物語の終わり方ですが、僕はハッピーエンドで終わってよかったと思っています。若いうちはいろいろな欲望があって一緒にいたい気持ちになりますが、そんないろいろな欲望も長くは続かないのが普通の人間です。そのあとに残るのは「ただ、ずっと一緒にいたい」というそんな感情だけでよいのではないでしょうか。

これを裏返すなら、「ずっと一緒にいたい」と思えないなら結婚はしないほうがよいです。たまたま昨日NHKのネット記事で「子供を餓死させた若い母親」の記事を読んだのですが、この若い女性は元夫の人から簡単に別れられるのですが、男性のほうは「一緒にいたい」とは思っていなかったことになります。つまり、結婚に際しては自分の気持ちはもちろんですが、相手も「ずっと一緒にいたい」と思っている人かどうかを見抜くことが大切ということになります。

予告編などでは宣伝の側面からどうしても「官能的な場面」を強調してしまいますが、直木賞作家の原作ですので、やはり深いものが感じられました。主演の瀧内 公美さんはこの映画で初めて知りましたが、脱ぎっぷりといい、演技力といい、すごいなぁと思いました。

その意味で言いますと、俳優の人たちはテレビに出ていないと認知度はどうしても高くなりませんので、その芸能界で生きていくのは並大抵のことではないと実感した次第です。たまたま昨日のニュースで深キョンさんが適応障害で一時活動停止すると報じられていましたが、人気がある人でも苦労しているんだなぁ、感じ入った次第です。

映画の中で印象に残っている場面があります。それは映画の終盤のほうですが、二人で壁伝いに歩く場面があるのですが、柄本さんが先に少し早歩きで歩き、そのうしろを女性が離されないようについていく様は、とても昭和を感じさせる映像でした。

それでは、また次回。

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