グリーンブック

2018年製作/130分/G/アメリカ
監督:ピーター・ファレリー
出演者:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ

1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。(シネマテゥデイより引用)

いや~、「さすがアカデミー賞を受賞した作品」というのが観終わったときの感想です。最後の場面では涙がジワーと出てきました。やっぱり、映画って素晴らしいですよねぇ。

主人公のトニー・“リップ”・ヴァレロンガを演じたヴィゴ・モーテンセンさんを見ていて、前に似た感じの俳優さんがいたなぁ、と思っていろいろ考えていて、やっと思い出しました。ジョン・ヴォイトさんという俳優さんですが、一番記憶に残っている映画は「チャンプ」というボクシング映画です。

僕の記憶では、この映画のキャッチコピーは「3秒に1回泣く」とかいうほど感動する作品だったように憶えています。僕は観る前は「大げさ」と思っていたのですが、実際に見てすぐに涙があふれる場面が出てきましたので、まんざら「大げさ」でもないな、と思った思い出があります。

今回調べていくうちに知ったのですが、なんとジョン・ヴォイトさんはブラッド・ピットさんの元妻であるアンジェリーナ・ジョリーさんのお父様でした。しかも、トランプ大統領の支持者でもあったのです。驚きでした。

話を「グリーンブック」に戻しますと、この作品がアカデミー賞を受賞したとき、ちょうと黒人差別が社会を席捲していたときでしたので、「その影響で受賞した」と揶揄する声も聞こえていましたが、たとえそうであったにしても「受賞に値する」映画だと思います。

公開前から、この映画は黒人差別を取り上げた映画と言われていましたので、そのつもりで観ていましたが、実は黒人差別だけではなく格差社会についても考えさせられる内容になっていましたす。その意味でも「アカデミー賞受賞」がふさわしい作品と感じました。

主人公のヴィゴ・モーテンセンさんが粗雑だけど優しい人柄を見事に演じていましたが、用心棒という設定からしますと、「もう少し体格が大きい人のほうがよかったのでは」と思わなくもありませんでした。用心棒のほうがピアニストよりも身長が低いのはやはりなんとなく…。

ピアニスト役のマハーシャラ・アリさんは適役でした。素人の僕が言うのもなんですが、素晴らしい演技で、特に映画の前半で見せていた「作ったような笑顔」が天下一品でした。

それにしても、民主主義を謳う米国で、これだけ激しい人種差別が行われていたのが不思議でなりません。それも決して遠い昔のことではありません。ほんの僅か50年ほど前のことです。いえいえ、まだ続いているのですから人間社会は本当に難しいものです。

先日、たまたまユーゴスラビア紛争の記事を読んでいたのですが、人間という生き物は差別をする心を生まれながらに持っている生き物なのかもしれません。世界のあらゆるところで「いろいろな差別」が行われていますが、悲しいかな、人間にはそのような“業”が備わっているとも言えそうです。

この映画で最も感動するところは終盤の車の中での二人の会話です。ピアニストが怒りのあまり、雨が激しく降っているにもかかわらず車から降り歩き出したあとを追いかけきたヴァレロンガに対して、感情を露わにして自らの気持ちをぶちまけるところです。黒人であるピアニストが初めて本音をあからさまにする場面でした。

差別という状況がいかに社会に溶け込んでいるか、または横たわっているか、そうしたことで黒人がいかに不利益を被っているのか、本当に考えさせられる問題です。

しかし、こうした映画が生まれアカデミー賞を受賞することに大きな意義があると思います。その意味で、米国社会はまだまだ捨てたものではありません。バイデン大統領が今の時代は「民主主義と専制主義の闘いだ」と演説しましたが、いかに民主主義を実践することが困難でも、民主主義以外に人々が平等を享受するシステムはありません。

それでは、また。

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