ヴィヨンの妻

2009年製作/114分/PG12/日本
監督:根岸吉太郎
出演者:松たか子、浅野忠信、室井滋、伊武雅刀
第33回 日本アカデミー賞(2010年)主演女優賞 松たか子

製作が2009年なんですけど、この当時僕は映画をチェックするということをしていなかったようで、この映画について全く記憶がありません。日本アカデミー賞の主演女優賞を獲っているのですから、それなりにメディアで、しかもフジテレビが製作していますので「めざましテレビ」などで間違いなく宣伝していたはずです。ですが、全く記憶にありません。我がことながら、それが不思議、というのが最初の感想です。

監督の根岸吉太郎さんの名前は「遠雷」で聞き覚えはありましたが、僕の青春時代に若手の監督として注目されていた記憶があります。その根岸さんが監督だったことに驚きを感じました。

記憶がありませんので想像ですが、この頃から松たか子さんは演技派として業界で認められていたのかもしれません。もちろんだからこそ主演を務められるのですし、主演女優賞も獲得できたはずです。その意味で言いますと、広末涼子さんの出演も驚きでした。

僕は広末さんに関してはアイドルとして活躍していた頃しか知りませんが、その広末さんが結婚して離婚して俳優として復活していたことに驚きました。芸能界は厳しい世界ですので、アイドルとして下火になったあとは、生き残っていくのは大変です。その中で子持ちでありながら芸能界での自分の立ち位置を確保しているのはすごいことです。

広末さんが演技派になった証と思える場面は、心中をした浅野さんを松さんが警察に迎えに行ったときに、廊下ですれ違う場面です。松さんに「勝ち誇ったような微笑み」を見せた演技はいやらしさ満載でした。

僕が言うのもなんですが、浅野さんは大根役者ですよね。でも、なにが凄いって、大根だからこそ、その存在感が増していることです。間違いなく演技は下手ですが、それを超越した存在感は浅野さんでなければ出せないでしょう。

僕はこれまでに幾人かの芸能人を見かけたことがありますが、その中にはいわゆる「オーラ」を発している人がいました。不思議ですが、スーパーサイヤ人のように身体の周りに光り輝いている層がありました。これが成功している芸能人の特別な存在感なのかもしれません。

話を浅野さんに戻しますと、浅野さんはこの5年後にNHKの土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」で主人公を演じるのですが、そのドラマの5年も前に松さんの相手役に抜擢したプロデューサーの目利き力にも感激です。

映画のはじめのほうで松さんが伊武雅刀と室井滋のお店で働くようになる場面を見ていましたら、妻の同郷の同窓生を思い出しました。僕たちが結婚して数年したあとのことですが、妻と子供2人と4人で商店街を歩いていますと、向かいを歩いていた同じくらいの女性に突然妻が大声で「トモコ(仮名)」と呼びかけました。

あとから聞いた話ですと、田舎の同窓生だったそうです。妻は遠く離れた東北生まれですが、そこの同窓生と東京の片隅で出会うのですから、感激するのも当然です。妻の話では、トモコさんは田舎にいた当時からヤンチャ系で目立っていたそうですが、僕たちに会ったときは、シングルマザーで子供を育てていました。なんとも逞しいことに、そのときの状況がまさしく松さん演じる佐知と同じだったのです。

そのときトモコさんは蕎麦屋で働いていたのですが、子供はその蕎麦屋さんの2階で面倒を見てもらっていたそうです。今から30年くらい前の話ですが、そんな優しい個人経営のお店もあったようです。そのトモコさんは今頃いったいどうしているのでしょう。この映画を見ていてそんなことを思いました。

数年前に新井浩文さんという演技派の俳優さんが暴行罪で逮捕され芸能界から消えた事件がありました。その新井さんがほんのちょい役ですが、出演していたのが興味深ったです。新井さんは逮捕される前は個性的な演技と存在感で人気を博していたのですが、名前が売れる前の時代です。どんな人でも売れるまでのほんのチョイ役は必要な過程時期です。

妻夫木君と堤真一さんも重要な役で出演していましたが、主演ではなくわき役でした。それでも、「仕事を引き受けるんだなぁ」と妙な感心をしました。主演にこだわらないことも芸能界で生き残っていくには必要な対応方法のように思います。

最後に浅野さんの演技に戻りますが、映画の最後の場面こそ、浅野さん大根役者だからこその名演技の真骨頂のように思いました。昔のことをほじくり返すようで申し訳ありませんが、浅野さんのモテ期で最も印象に残っているのは、まだ結婚する前の仲 里依紗さんとの路上チューのゴシップです。年齢差30才以上のはずですが、浅野さんにもたれかかっていた仲さんの姿が若さを象徴しているようで素敵でした。

現場より、以上です。それにしても堤さんは「なで肩」だ。

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