かそけきサンカヨウ

2021年製作/115分/G/日本
監督:今泉力哉
出演者:志田彩良、鈴鹿央士、井浦新、菊池亜希子

あらすじ・解説
女子高生の国木田陽(志田彩良)は、幼いころに母の佐千代(石田ひかり)が家を出て以来、父の直(井浦新)と二人で暮らしていた。しかし父の再婚によって平穏な日常は一変し、新しい母・美子(菊池亜希子)とその連れ子で4歳のひなたとの新たな暮らしが始まる。そんな家庭環境への戸惑いを、陽は自分と同じく家族に悩む同級生の清原陸(鈴鹿央士)に明かす。一方で実の母への思いを抑えられなくなった陽は、陸と共に画家である佐千代の個展を訪ねることにする。

簡単にまとめていいますと、「大人になる一歩手前の男女の成長物語」といったような映画でした。原作は窪美澄さんという方ですが、本屋さんのランキングコーナー幾度か見かけたことがあります。少しばかり変わった名前でしたので記憶に残っていました。直木賞の候補にも幾度かなっているようですが、いつか獲れるのではないか、という気がしています。

石田ひかりさんは「子どもをおいて出ていった母」という重要な役ですが、登場する場面はあまりありませんでした。なんかもったいない、というか贅沢な映画の作りといった印象です。この映画はアマゾンプライムのトップページで紹介していましたので、観る気になったのですが、そのきっかけは主役のひとりである鈴鹿央士さんが出演しているのを知ったからです。

いつだったか、なにかの記事で「広瀬すずさんがどこかの撮影場所で、エキストラとして来ていた鈴鹿さんを見つけて声をかけた」と読んだことがあります。僕が驚いたのは、年齢的にいってもまだベテランという立場でもない広瀬さんがそのような行動をとったことでした。

もちろん朝ドラの主演もやっていますし、デビューして10年も経っていますし、それなりの実績を残してはいます。ですが、新人をスカウトするとなると、芸能界においての「力」もある程度必要なのではないか、と素人的な発想では思ってしまいます。それを軽々かはわかりませんが、現実として実行に移しているのですから、やはり「芸能界での力」があるのではないかと、驚くというよりは感動した次第です。

鈴鹿さんは今、スマホのCMに出ていますが、そのCMで共演しているのが広瀬すずさんのお姉さんである広瀬アリスさんなのはなにかの縁でしょうか。アリスさんは現在ドラマの主役を2つ持っているそうですが、売れっ子中の売れっ子といった感があります。

実は、僕は広瀬アリスさんをとても尊敬していまして、それは妹である広瀬すずさんのほうが先にブレイクしたにもかかわらず、焦ることもなく妬むこともなく、一つ一つ仕事をこなしている感があるからです。最近、著名人の間で姉妹の軋轢が表面化することが多いのですが、血のつながった姉妹といえども人格は別です。姉妹だからこその競争意識も芽生えるでしょうし、その関係性をうまくこなすのは、姉と妹の両方が人間的に優れていることが必要です。

今「優れている」という表現を使いましたが、そこに既にライバルとしての芽があることを示してもいるように思います。周りを取り囲む人たちは、意識していようがいまいが、どちらかに優劣をつけたがるものです。そうした目にさらされるのが姉妹の運命であり、宿命です。そうした環境を泳ぎ切るのは並大抵の意識ではできません。広瀬アリスさんはそうした点において、本当に実に素直に乗り切っているように見えます。そうした姿勢が今の俳優としての立派な立ち位置にいる原動力になっていると思います。

それはさておき、広瀬すずさんに見初められた鈴鹿さんですが、ついこの間まで素人だったはずです。そんな彼が、素人っぽさを微塵も感じさせずに立派に役を演じていました。素人の僕が言ってもあまり意味がありませんが、自然に役にとけこんでいたように感じました。

僕が近年で最も自然な演技と思ったのは池松壮亮さんですが、池松さんは子役から出発しているのですが、大人になってからの池松さんに僕が気づいたのはある生命保険会社のCMでした。わずか30秒ほどの時間でしたが、その短時間でも十分に「自然な演技」を醸し出していました。それからしばらくして、いろいろな映画に出ているのを知ったのですが、鈴鹿さんを最初に僕が知ったのもCMからでした。

芸能界のことは詳しくはわかりませんが、新人さんはCMからはじめようとするのが最近の事務所のはやりなのかもしれません。松岡茉優さんもCMで見たのが最初だったように記憶しています。

この映画は、無理やりに結論にたどり着こうとしていないところがいいです。長い人生の結論なんて、そうやすやすと出るものではないのですから。

それでは、さよならさよなら。

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