めまい 窓越しの想い

2019年製作/114分/G/韓国
監督・脚本:チョン・ゲス
出演者:チョン・ウヒ、ユ・テオ、チョン・ジェグァン

あらすじ
高層ビル内のオフィスで契約社員として働くソヨン(チョン・ウヒ)は、上司ジンス(ユ・テオ)との極秘の社内恋愛が破綻しつつあり、さらに母親から毎晩かかってくる電話に悩まされていた。安定した生活を求めながらも、仕事に恋、家族関係まで彼女を取り巻く状況は不安定で、極度のストレスから体調を崩してしまう。そんな中、ソヨンはオフィスの窓を清掃する青年グァヌ(チョン・ジェグァン)と出会う。

僕は結構感じることが多いのですが、韓国映画は本題に入るまでが長いように思います。またタイトルには「めまい」は余計で「窓越しの想い」だけで十分だと思います。それはともかく、毎回韓国映画について書いていますように最後はちゃんと「感動」していますので評価は高いです。

この映画を観ていますとところどころでチャップリンの雰囲気を感じるのですが、例えばチョン・ジェグァンさんが演じているグァヌの設定が窓ふきだったりピエロだったりするところです。映画の真ん中あたりでグァヌがビルの屋上の角に座っているシーンがありますが、あのシーンはグァヌを天使に思わせることができる映像です。前に「天使のくれた時間」という映画を観ましたが、この映画をファンタジー的にとらえますと、窓ふきの主人公を天使になぞらえているとも思えます。

主人公・ソヨンにいろいろな辛いことが続き、心がいっぱいいっぱいになってしまい、張り裂けそうな状況になった場面がありますが、ただただ涙を流す演技は素晴らしいものがありました。話は戻りますが、社内恋愛の相手ジンスと別れる前のあたりでは、状況は違いますが、僕の頭の中にはハマショーさんの「もう一つの土曜日」が流れてきました。

この映画を観る気持ちになったのは、公開日が昨年だったからです。近年はいろいろなものが進歩しているので、例えば10年前に製作されたものですと、通信機器もスマホではなくガラケーだったりします。そうしますとなぜか気持ちが萎れてしまうのです。10年前の設定であるなら感じないのですが、製作されたのが10年前ですと観る気持ちが萎れてしまいます。ですので、最近のものを観たいと思っていましたのでこの映画に惹かれたのでした。

ですが、冒頭書きましたように、本題というか主題に入るまでが長かったので少しばかり後悔に似た気持ちにもなったのですが、終盤の30分で見事に感動に持って行きました。窓ふきのグァヌはあまり登場しないのですが、それでも最後の最後に魅力を爆発させていますので、そうした監督の手腕はさすが!です。

またしても話が戻るのですが、グァヌを天使に思わせるのは、主人公ソヨンが振られた腹いせにクラブで酔っぱらったときにソヨンに気づかれないようにナンパサラリーマンから守ったりしたからです。これもチャップリンを思わせるものです。

それにしても、物語の端端に現在の韓国社会の負の側面が描かれているのも興味深いです。韓国は格差社会と報じられていますが、契約社員の身分の低さとかパワハラ・セクハラなども格差が背景にあることもわかります。また、親子関係の問題点もさりげなく描いていますので、韓国の若者の大変さが伝わってきました。本屋さんに行きますと、韓国の今の若者とりわけ女性の生きづらさを訴える本が並んでいますのでなんとなく理解できます。

僕が一番感動したシーンは、ソヨンがいっぱいいっぱいになっていて食堂で一人で昼食をとっているときにグァヌが窓ガラスにスプレーで「ガンバレ!」と応援する文字を書いたところです。最後に一つだけ苦言を書きますと、終盤で二人してゴンドラでビルの外に降りていくのですが、話の展開的には強引なように感じました。でも、総合的には感動した映画です。

最後にこの映画を観て、一番思ったことです。

愛って、相手が本当に困っているときに応援すること!

それでは、さよならさよなら。

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