<嘘を愛する女>

製作:2018年(日本)
監督:中江和仁 
出演者:長澤まさみ、高橋一生、吉田鋼太郎、DAIGO

長澤まさみさんが主演ですが、長澤さんはまだ30才を過ぎたばかりの年齢にもかかわらず、もう立派な大女優になった感があります。長澤さんの最近の出来事で最も印象に残っているのは、長澤さん主演の「コンフィデンスマン・JPプリンセス編」の記者会見のときの対応です。

今年前半の芸能界は東出昌大さんの不倫問題で持ちきりでしたが、その影響で東出さんは俳優活動ができなくなりつつありました。そうした状況での「コンフィデンスマン・JPプリンセス編」の記者会見だったのですが、続編について東出さんが「自分の出演は(評判が悪いので)難しい…」旨の自虐ギャグを飛ばしたところ、長澤さんが「そんなことは言わないで!」と真剣にたしなめたそうです。

長澤さんのこの発言・対応により、東出さんへの風当たりが少し弱まった印象を受けました。長澤さんの根底には、過去に過ちがあったとしても、これからを真面目に生きていくならば、「それでいいではないか」、「一つの過ちで人生を終わらせるのは間違っている」という考えがあるように感じました。

実は、このシネマクラブではなく「じゃ、また」のコラムで長澤さんについて紹介したことがあります。今から3~4年くらい前、もしかしたらもっと前かもしれませんが、長澤さんはある雑誌のインタビューで「努力の天才になりたい」と話していました。この記事を読んだとき、こんな若さでそんなことが考えられることに驚かされた記憶があります。

この「努力の天才になりたい」という言葉には、「人間には持って生まれた才能というものがあり、その才能によって人生は決められる部分がある」ということが示されています。このような悟りとも言える発想を若干30歳前の女性が開いていたのです。驚かずにはいられません。

俳優という仕事は、いろいろな人生を演ずることですので、そうした経験をすることで普通に人生を生きている人よりも中身の濃い、充実した人生を送っているのかもしれません。そう考えるしか、長澤さんのすばらしさを理解することはできません。

先週は、俳優の伊勢谷友介さんが大麻所持の容疑で逮捕されましたが、伊勢谷さんと東出さんには似ているところがあります。それは外面からは「真面目」という印象を受けることです。伊勢谷さんは日ごろから社会に対する提言を行ったり行動を起こしていました。報道にもあるように、伊勢谷さんは子供たちの教育にも力を入れており、ある学校の学長を務めていたこともあります。それほど社会に対する関心が強い一面を持っていました。

対する東出さんは、考え方が実直でどんなことにも真正面から取り組み、核心を極めようと努力する性格を持っている人のように感じていました。二人がなにかの番組で対談しているのを見たことがありますが、知識も豊かで行動力もある伊勢谷さんに東出さんが心酔しているように見受けられました。

「実直」と「真面目」の塊のような東出さんだっただけに、不倫騒動には驚かされました。普段から「女好きなエロい男」のイメージの人であったなら、「さもありなん」でしたが、想像外のスクープでしたので驚きも半端ではありませんでした。

外見から受ける受ける二人の共通する印象は「実直」と「真面目」ですが、心の中まではわかりません。そこが、人間の難しい、そして面白いところです。二人の現在の状況はまさにそのことを教えています。

「嘘を愛する女」はこの二人とは正反対の結末です。嘘で固められていた同棲相手の男性の人生を長澤さんが探し求める物語ですが、この映画を観ていた途中から感じたのは、話の進行が「映画らしい映画」ということです。ある意味、ロードムービーと言えなくもありませんが、全体を通して感じるのは「映画らしい映画」という印象です。

長澤さんの恋人役を演じるのは高橋一生さんですが、高橋さんは下積みが長く売れるまでかなり時間を要しています。こうした人に多いのですが、一見するとおとなしそうな雰囲気の心の奥底には、演技と言いますか、人生と言いますか、そうしたものに対して一家言を持っています。僕の想像では、下積みが長かった人に共通する点だと思います。

ここ最近で遅咲きした俳優さんと言いますと、中村倫也さんが思い浮かびますが、おそらく中村さんも演技に対する思い入れは強いはずです。映画の中で長澤さんと一緒に同棲相手の人生を探す役を演じているのは吉田鋼太郎さんですが、吉田さんもまた遅咲きの一人です。吉田さんの場合は、「遅咲き」というよりは「売れることを求めていなかった」のが実際のようですが、その理由は舞台を中心に活動していたからです。舞台俳優の人に多い特徴です。

レビューを見ますと、意外に評価が低いのですが、確かにまどろっこしい感じはありますが、僕的にはそこまで悪い映画だとは思いませんでした。

では、また。

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