「七つの会議」

製作:2019年/119分/G/日本
監督:福澤克雄
出演者:野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助

僕が定期的に読んでいる、あるIT社長の記事で薦めていましたので観ました。公開は2019年ですので、わずか2年前です。当時、大分テレビでCMが流れていたように思いますが、もう大分前のように思ってしまうのはなぜでしょう。わざわざ言う必要もないと思いますが、原作は「半沢直樹」さんで有名な池井戸潤さんです。物語の展開はさすがビジネス物の名ストーリーテーラーです。

この映画を観ていて最初に思ったことは、出演者全員の身長が低いことでした。そんなところに注目するのは僕が身長にコンプレックスを持っているからかもしれませんが、主人公の野村萬斎さんはじめ香川照之さんといった主要人物の身長が低いことに意識がいってしまいました。

この映画のキーワードは「隠蔽」ですが、似たような事件が2001年に起きたことを思い出しました。「雪印牛肉偽装事件」という事件ですが、ウィキペディアより引用します。

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2001年9月10日、日本産牛肉に牛海綿状脳症 (BSE)にかかったものがあることが農林水産省から発表された。これを受けて農林水産省がBSE対策として実施した、全頭検査前の国産牛肉買い取り事業を悪用し、2001年10月に雪印食品関西ミートセンター(兵庫県伊丹市)のスタッフが、外国産の安価な牛肉を国内産牛肉のパッケージに詰め替え、農林水産省に買い取り費用を不正請求し、2億円の補助金を騙し取っていた。

2002年1月、偽装が行われた現場の一つである西宮冷蔵の水谷洋一社長がマスコミに告発を行い、偽装が発覚。雪印食品は経営が急速に悪化し、廃業解散した(清算)

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世間に名の知られた大企業である雪印が犯したなんとも情けないセコイ事件ですが、この事件で世間の注目を集めたのは告発した冷凍倉庫会社の社長でした。もし、この事件が実際の話ではなく映画やドラマでしたら、正義のヒーローとして称賛されて終わるのですが、現実の世界はそうはならず、結局告発した社長は廃業に追い込まれていきました。悪いことをした奴を告発するという正しい行いをしたのですが、世間は正義感を貫いた人間を見殺しにしてしまいました。

いわゆる大衆という怪物は本当に無責任で、世論が盛り上がっているときは強い関心を示すのですが、時間が経つに従い徐々に関心は薄れ、ついには全く興味を示さなくなります。大衆の最大の欠点は関心・興味が長続きしないことです。ノーベル平和賞を受賞したサマー・テレサ氏は「愛の反対は憎しみではない。無関心である」と話していますが、大衆という怪物は欠点を修正することができない生き物のようです。

最近で言いますと、2019年2月に起きたセブンイレブンの加盟店と本部の対立があります。大阪の加盟店主が本部に対して営業時間に関して裁判を起こしたのですが、裁判を起こした当初は加盟店主に好意的な反応が多かったのですが、時間が経つにつれて関心を持たれなくなっています。つい最近も本部が有利になるようにと行動を起こしましたが、本部に対して批判的な意見はほとんど起きなくなっています。

映画の話に戻りますと、終盤で「隠ぺいを告発すると会社が倒産する」と社長が訴える場面があります。この場面を観た時に思い出したのは自動車のエアバックのメーカー「タカタ」の事件でした。ご記憶の方も多いでしょうが、本来安全装置として設置してあるものが反対に殺人装置になったと報道されたのですからたまったものではありません。リコールや賠償などをトータルすると数千億円にもなるなるそうですが、想像を絶する金額で倒産もやむを得ない結果です。

タカタのような品質の理由ではありませんが、カネボウ化粧品も記憶に残っている事件です。カネボウの場合は粉飾決算だったわけですが、この事件などは典型的な上司の顔色うかがい仕事の末路です。「七つの会議」を観ていて、最初のうちは「本当にこのような会社なんてあるのか」と思っていましたが、いろいろと思い出してみますと、実際に存在していたことを思い出しました。原作者の池井戸さんもそうした事例を参考に書いたのではないでしょうか。

僕は普通の会社員の経験が3年弱しかありませんので、実際のところはわからないのですが、会社や上司からあまりに理不尽なことを言われたとき、会社勤めの人たちはこの映画の中の人たちみたいに本当に従うのでしょうか。そのあたりの真実性が今ひとつ理解できませんでした。

営業という職種の場合、ノルマというプレッシャーをある程度受けることは想像できます。ですが、そのノルマのために人生まで狂わせられるのはあまりにばかげています。洗脳ではありませんが、あまりに仕事に没頭しすぎるとそうした感覚がマヒすることはありそうです。この映画とか、それこそ半沢直樹を観て、一般の会社員の方は留飲を下げたのか、それとも身につまされたのかどちらなのかなぁ、と思っていました。

この映画は主な登場人物以外にも錚々たる役者さんがたくさんでていますが、こういう人たちにもそれなりに出演料を払うのでしょうか。そんなことも気になりました。もし、そうであるならかなり贅沢な映画製作と言えそうです。

最後に、役所広司さんが終盤にほんのわずか出てくるのですが、ほんの少しの登場場面とはいえ、強烈な印象を僕に残しました。役所さんって凄いなぁ…。

では、また。

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