花束みたいな恋をした

2021年製作/124分/G/日本
監督:土井裕泰
出演者:有村架純、菅田将暉、

解説
「東京ラブストーリー」「最高の離婚」「カルテット」など数々のヒットドラマを手がけてきた坂元裕二のオリジナル脚本を菅田将暉と有村架純の主演で映画化。坂元脚本のドラマ「カルテット」の演出も手がけた、「罪の声」「映画 ビリギャル」の土井裕泰監督のメガホンにより、偶然な出会いからはじまった恋の5年間の行方が描かれる。
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦と八谷絹。好きな音楽や映画がほとんど同じだったことから、恋に落ちた麦と絹は、大学卒業後フリーターをしながら同棲をスタートさせる。日常でどんなことが起こっても、日々の現状維持を目標に2人は就職活動を続けるが……。
(映画.comより引用)

この映画が公開された当時、面白そうだなぁとは思ったので、amazonプライムで観られないかなぁと検索したところ、有料でしたので我慢していました。ところが、年末になにかのセールらしく、「100円で公開」観られることをたまたま知り、意を決して見た次第です。結論を先に書きますと、観て損はなかったです。

この映画を観ると、脚本の坂元さんのセンスに驚かされるというか、尊敬以外にありません。主人公ふたりの口から出てくる言葉をいったいどのようにして見つけたのだろう、って気分になります。坂元さんの年齢もかなり中年のはずなんですが、今の若者の風習や感性を見事に描いています。

映画の出だしで、その会話の、セリフの妙に感激していたのですが、話が進めが進むほど感激の度合いが強くなっていくのには、本当に驚きです。坂元さんは天才以外のなにものでもないですね。

繰り返しになりますが、坂元さんは今の時代を若者のすべてを取り込んでいます。ですので、坂元さんだったなら、若者になりすましてブログなども書けるのではないでしょうか。不謹慎にもそんなことを想像してしまいました。

実は、最初のほうで有村さん演じる絹ちゃんの親が、二人が同棲することに対して「反対しない」ことは少しばかり現実離れしているように思いました。ですが、話が展開するに従って、それもあまり気にならなくなっていくのは二人の心の移り変わりを丁寧に描いているからですね。普通だと、絹ちゃんの親はそれなりのお金持ちの設定でしたので、世間体というか、相手の男の素性にはかなり神経を使うものです。でも、そんなことは二人の心の変遷を見事に描いていることですっかり気にならなくなっていきます。

これは脚本の坂元さんには関係ないのですが、区切り区切りで玄関に置いてある二人の靴を映すのは、昔の映画の手法を思い起こします。これは批判的に言っているのではなく、主人公二人の関係性を映すのには最適と思いながら、観ていました。

最終的には二人は同棲を解消するのですが、その前に菅田君演じる麦君が怒りながら「結婚しよ!」というときに二人の顔をアップにしたところは、なんか「すごい!」と思いました。

それにしても主人公ふたりの演技力はなんとも素晴らしいものがありました。僕が特に印象に残っているのは、絹ちゃんが電車の中からほかの男性にメールをした直後に、麦君がいることに気づき目を合わせたときの表情、ばつの悪そうな雰囲気の顔がなんともいえず素敵というか、見事でした。

別れの最後の場面はファミレスで向き合うのですが、5~6年前に「いつかこの恋を思い出したら泣いてしまう(通称:「いつ恋」)という、これも坂元さんの脚本なのですが、その最後の場面もファミレスでした。しかし、「いつ恋」ではハッピーエンドなのに対してこの映画では悲しい終わりとなっています。もしかしたなら、坂元さんは意図的にやったのではないか、と想像しています。

実は、この別れの場面で僕は、吉田拓郎さんの「外は白い雪の夜」という曲が頭の中に流れてきました。歌詞の内容は違うのですが、この歌がふさわしい映像だと思いました。そして、このときの二人の台詞のやりとりも最後にふさわしい秀逸な言葉でした。

ちなみに、ファミレスはロイホじゃなくて、サイゼリヤじゃなくて、ガストじゃなくて、ジョナサンでした。

それでは、さよならさよなら。

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